完璧御曹司の溺愛
衝撃の告白
「んっ」
静かな室内に響く甘い声。薬品の微かな匂いが鼻をくすぐるなか、理央は目の前で繰り広げられている光景に釘付けになった。
閉め切っている黒いカーテンに巻き付くようにして、男女が口づけを交わしている。
放課後の理科室は誰も利用しない。だからもちろん、扉で続きになっている理科準備室には誰もいるはずがなかった。
理央が理科準備室のドアを開け、口を押さえて立ち尽くしている事なんて、深い口づけに夢中の二人は、気付きもしない。
「ん、裕太…激し……」
「遥、今日はいいだろ…?」
「まだ駄目…。あと3日、待ってよ…」
彼女は否定の言葉を口にするのに、細い腕を相手の首にからませて、焦らすようにキスをねだった。
「待てない、今すぐ遥が欲しいのに…」
互いに視線を絡ませながら、二人の口づけは止まらない。
な、何これ…。
理央は、ただ呆然とその光景を見送るしかなかった。
自分から「何をしてるの!」と声を荒げる勇気もない。だからと言って、何事もなかったように引き返す程、太い神経を持ち合わせてもない。
ただ、足が震えた。
嘘だよね…こんなの……。
だって、裕太は、私の彼氏でしょ?
眼前で、他の女性に夢中の裕太は、理央にとって付き合ってまもない彼氏でもあり、小さな頃から仲が良かった幼なじみでもあった。
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