完璧御曹司の溺愛


「だってさっき、理央が寂しい顔したのも、裕太の事、引きずってるからなんでしょう!?」


「そ、それは…」


 鋭い指摘に、理央はドキリとする。

 それは、裕太の事を考えていたわけじゃないからだ。


「だいたいっ!裕太なんかと付き合うなんて、私、反対したんだよ?あいつ、中学の時から派手な子ばっかとつるんでたし、女癖悪いのも分かってたじゃない!」


「うん…」と、理央は素直に頷く。


「もう、昔みたいな奴じゃないって分かってたのに、何で付き合うかなぁ!?」


 咲は、理央が全く理解できないと言ったように、ショートヘアをガシガシとかいた。


「でもね、裕太はいつも危なっかしくて、なんか、ほっとけなくて…」


 ほっとけない?


 自分で呟いた言葉にふと、疑問を抱いた。


 ほっとけないから付き合うって、なんかおかしくない?


 咲も同じ疑問を抱いたようで、二人同時に顔を見合わせた。


「ねぇ、理央?つかぬ事をお聞きしますが…」


「あ、はい、なんでしょう?」


「あんた、本当に裕太の事好きだったの?」


 ストレートに問われて、理央は言葉に詰まった。


 理央はまだ、本物の恋がどんなものか分からない。


 だから、答えられるはずもなかった。


「ねぇ、咲ちゃん?逆に聞きたいんだけどいい?」


「はいはい、なんでしょう?」


「人を好きになるって、どんな気持ちなの?」


 予感が的中した咲は、ガクリとうなだれた。
 

 そして、ボソリとため息交じりに呟く。


「ねぇ、理央。私のさっきの怒り、返してくれるかな?」
  





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