完璧御曹司の溺愛
しばらく保健室で過ごした理央は、咲と一緒に帰る為、ベッドからおりようとした時、ちょうど保健室のドアが開かれ、三春が姿を見せた。
「あ、三春ちゃんだ!」
咲が三春に気付き手をふった。
「よ!二人共」と、三春は男みたいに片手を上げる。
華奢で高身長の三春は、白衣姿がとっても似合うと理央は思う。
自分の椅子にドスッと座ると、後ろで一つに束ねた長い髪が左右に揺れた。
「もう!三春ちゃん、色気ない。だから彼氏出来ないんだよ…」
咲が呆れたように言うと、三春は「ほっとけ」と軽く返事をする。
男女問わず生徒に人気の三春は、その辺りの事は散々言われなれてるようで、さほど気にしない。
顔はなかなかの美人なのに、男勝りでガサツな性格が駄目なんだと、ここの生徒は思っているが…
「日本の男は皆、低身長なくせに、女にも低身長を求めるからだろう」と、本人は身長のせいにしている。
「桜井、体調はどうだ?」と、三春が理央に視線を移す。
入学してから、何度もお世話になっている保健医の三春は、理央の体調の事は把握してくれている。
だから、今日みたいに突然倒れるような事があっても、取り乱さずにいてくれる。
理央が起きたとき、三春が保健室にいなかったのも、理央を静かに休ませる為の、三春なりの配慮なのだろう。
だから、いつもの感謝もこめて、理央は礼を述べた。
「もう、大丈夫だよ。ありがとう、三春ちゃん」
「あぁ」と三春にニコリと笑われて、同じように理央も笑顔を返した。
体調を崩した理由も、理央が話したくなるまで無理に聞き出そうとしてこないところも、理央が三春に信頼を寄せる理由の一つだった。
でも、今日の三春は少し違った。
少し考えるような顔をしたと思ったら「桜井、ちょっといいか?」と理央に声をかけてくる。
「さっき、お前をここまで運んでくれた奴の事だけど…」