完璧御曹司の溺愛
「うん」と頷いて、理央は涼子の隣に並ぶ。
キッチン、ダイニング、リビング
ここは、それら全てが繋がっているオープンスペースとなっていて、全面ガラス張りの大きな窓からは、庭を彩る緑の木々が初夏の風に揺れている。
まるで、森の中の別荘を訪れているかのような、清々しい日曜日の朝。
涼子と食事の準備を進めていると、しばらくしてキッチンに秀和が顔を出した。
昨夜はいつ、帰宅したのだろう。
既にスーツ姿の秀和は「いい匂いだね」と、ニコニコと嬉しそうに笑いながら理央と涼子の側へやって来る。
「初日から、奥さんと娘が作る朝食を食べられるなんて、こんなに幸せな朝を迎えられるのは、いつぶりだろう」
「秀和さんたら、大袈裟ね」と、涼子は少し照れながら笑う。
「おじさん、おはようございます」
「うん、理央ちゃん、おはよう。昨夜はよく眠れたかな?」
「実は、まだ慣れなくて、あまり…」
「昨日来たばかりで無理もないね。先は長いんだ、のんびりいこう」
その時、リビングへ入ってきたのは悠斗だった。
悠斗もスーツ姿だった。
上着を腕にかけながら、シャツにネクタイを通している。
「悠斗君、おはよう」
悠斗がキッチンにいる理央達に気付いて、こちらへやって来た。
「悠斗、おはよう」
「おはよう。皆、朝早いね」
悠斗も、いつもと変わらない爽やかな笑顔を浮かべた。
この笑顔は、朝も昼も夜も、変わらないと理央は思う。
好きな人の笑顔は何よりも特別。
もう何度も見ているというのに、初めて会った時のように、理央の心臓はドキドキと鳴ってしまう。