完璧御曹司の溺愛


「そうだ。今夜は久しぶりに早く帰れそうだし、夕食は皆で外で食べないか?」


 秀和の提案に「えぇ、いいわね」と涼子が笑顔で賛同する。


「前回言ってた通り、理央ちゃんの行きたいところにしようか?」


 あの高級レストランで、私の食事がなかなか進まなかった事を、おじさんは気にしてくれていた。


 私は、目の前に座る悠斗に、ただ見惚れていただけなのに…。


「あ、えっ、えっとぉ〜」


 でも、そんな事、今更言えない理央は、言葉に詰まってしまう。


「どこでもいいんだよ?食べたい物言ってごらん?」


 おじさんは優しく聞いてくるけど、私の知ってるお店なんてラーメン屋かファミレスくらいだもん。


 そんなの、おじさん程の人が知ってるとは思えない。 



「私、何でもいいから!ゆ、悠斗の好きな物でいいよ!」


 とっさに、隣で静かに食事をしていた悠斗に、ふってしまった。


「そうよ、悠斗君の食べたい物でもいいのよ?」と、涼子が乗ってきてくれて、安堵する。


「俺の?」と、悠斗は少し驚いていたが、理央と涼子に頷かれ、「じゃあ、提案していい?」と秀和に視線を送る。


「言ってみなさい」と言う秀和の言葉を待って、悠斗が口に出したのは……



「家で、理央が作ったカレーが食べたい」



「……理央ちゃんが作ったカレー?」と、秀和は意外そうな顔をした。


「前に家に行った時、ご馳走してもらった。すごく、美味しかったから…」
 

 そう言えば、一緒に住む事になったら、また作って欲しいと言われてたんだっけ…?と、理央は思い出す。


 秀和は、期待するかのように、口角を上げた。


「ほぉ、それは私も食べてみたいな。理央ちゃん、作ってくれないか?」


「私のカレーで良ければ、ぜひ…」


「じゃあ決まりだ。今夜も楽しみが増えたな!」



 秀和の嬉しそうな笑い声が、部屋中に響いた____





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