完璧御曹司の溺愛


 朝食を済ませ、理央は悠斗と共に学校へ向かった。


 悠斗の家から学校は、少し遠い。

 いくつかの電車を乗り継ぎ、学校が近くなると、同じ制服を着ている人が電車内に増えてきた。


「瀬戸先輩の隣にいるのって誰?」

「もしかして、彼女なのかな?」


 ヒソヒソと噂しながら、私達を見ている生徒達。

 それらの視線を何となく気まずく感じ、俯いていると、悠斗の方から話しかけてくる。


「理央、大丈夫?緊張してる?」


「えっ?」


「俺達、今日から学校で兄妹になるでしょ?」


 今日は、理央の苗字が瀬戸に変わり、理央と悠斗は兄妹になる事実が皆に知らされる日。

 母やおじさんだけでなく、私は学校という大衆の中でも、この気持ちを隠して過ごさなければならないんだ。


「不安?」


 今の気持ちを言い当てられて、理央の心は揺れた。


 不安じゃないと言えば嘘だった。

 自分の気持ちを隠し通す事は、きっと容易な事ではないはずだし、辛い事かもしれない。



「大丈夫だよ。何があっても、俺の気持ちは変わらないから」


 電車の中、学校に着く駅の間近で、悠斗は理央の耳にそっと囁いた。


「最初に俺達が出会った時の事を覚えてる?あの時から俺の気持ちは何も変わってない。この先もずっと、変わることはないからね」


「悠斗…」


「不安になった時は、俺だけを見て、信じて?」


 誰にも見つからないように、悠斗は理央の手を握り、自分のポケットの中に入れた。

 その中で恋人のように、指を絡めてくれる。

 悠斗の指は、理央の指よりも長く太く、そして温かくて、何も心配はいらないと、そう言ってくれているみたいだ。


「うん、信じる…」


 理央は瞼を閉じ、悠斗の長い腕にそっと寄り添った。





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