完璧御曹司の溺愛


 理央の名字が変わった事は、担任によって、皆に知らされた。

 靴箱やロッカー、出席名簿の名前も、桜井から瀬戸に変わる。 


 休み時間になると、理央の机は、あっと言う間に女子生徒に囲まれてしまった。

 皆、理央が本当に瀬戸悠斗の妹なのかと、半信半疑で聞いてくる。

「親同士の再婚で急に決まった事…」と返すと、理央と悠斗は既に付き合っていると思い込んでいた大半の女の子達は、歓喜していた。



「今日は大人気だね、理央」


 女の子達の波が去り、一息ついていると、咲が寄ってきた。


「うん。何だか疲れた…」


「そうだろうねぇ。お疲れ様」


 咲に後ろから肩を叩かれていると、「にしても兄妹ねぇ。あの先輩、最悪だろうな」と、隣の空いていた席にドカッと腰をおろす生徒がいた。


 今日は珍しく教室にいて、今の光景の一部始終を見ていた裕太だ。


「兄妹なんて、生殺しみたいなもんだろ?」


「なまごろし?」


「あぁ。だって、同じ屋根の下に住んでんのに、妹って理由だけで、手ぇ、出せないんだぜ?」


 途端に咲が、目を釣り上げた。


「だから、何であんたは、話をそういう方向に持っていくわけ?」


「俺は、同じ男として同情してるだけだっつの」


「先輩を、あんたと同じ野蛮人にしないでよ!」


「野蛮に決まってんだろ!?正常な男なら、好きな女と四六時中やりたいに決まってる!」


「正常とか、四六時中とか、そんな大声で言うな!バカ!」と、裕太と咲の怒号が、いつものように飛び交う。




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