完璧御曹司の溺愛
 

 首を傾げて考えていると、三春は理央の肩を叩いた。


「それにしても良かったな桜井。そんな人気のある男に、お姫様抱っこなんかで連れて来られて」


 お、お姫様だっこ!?

 思わず絶句し、固まってしまう。


「何だ、不服そうだな?肩に担がれる方が好きか?」


「大工と材木みたいだぞ?」と、三春にケラケラと笑われて、理央は身を縮めた。


「うぅ…、材木よりは全然いいけど…」


 でもまさか、自分がお姫様抱っこされてるなんて思わなかった。


 意識が飛んでいた間、白目になっていたりしなかっただろうか…。


 学校一の王子様に、幻滅されて帰って行かれたなら、立ち直れない自信がある。


 理央の心配を察してか、三春は大丈夫だと言った。


「ここにお前を連れて来た時の瀬戸は、酷く動揺した様子でな、私が何度大丈夫だと言っても、お前のいるベッドから離れようとしなかったぞ。この子は目眩持ちで少し休めば目が覚めると説明はしたんだが…ずっとお前の手を握っていた」


 手、手を――!?


 思わず、自分の手を見つめた。


 どっちの手か分からないけど、私、そんなに瀬戸先輩に気遣われてたんだ…。


 先輩が確かに現実に存在していたこと、そして自分を心配して手を握ってくれていた事、理央はどれもとても嬉しいと思った。


「急用があったようで帰って行ったが、時間ギリギリまでお前の側にいたから、お前達は恋人同士だと思っていたんだが、桜井のその様子じゃ、そうは見えないな…」


「ど、どういう事なの、理央!?あの、瀬戸先輩といつの間にお近づきになってたの!?」


「うん、それは私も気になるところだな…」


 二人同時に視線を送られ、理央は戸惑う。


 私だって、知りたいくらいなのに……。


 あの人がどういう人か、どうして私をそこまで大事に思ってくれているのか、まだ何も分からない。


 でも、私はあの人に助けられた。


 裕太と遥のキスシーンや心ない言葉に深く傷つき、目眩を発症してしまったのは事実だ。


 あの人がいなかったら、私は今この保健室ではなく、大きな病院のベッドの上にいたかもしれない。


 胸がジワジワと温かくなるのを、理央はしっかり自覚していた____   







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