完璧御曹司の溺愛


「何、あんたまだ、理央に…」と、言いかけた咲に、裕太は言葉を被せた。


「お前今、あの先輩とその家族と暮らしてんだろ?」


「うん」


「つり合いとれてんのかよ?庶民と御曹司の」


「えっ」


「あいつ、めちゃくちゃ金持ちの御曹司らしいじゃん?」


「ど、どういう事、理央?先輩、御曹司って?」


 咲が驚きの声をあげるも、理央は言葉を失ってしまった。

 その隙に、裕太が説明に入る。


「そのままの意味。あいつの親、瀬戸秀和って言って、大企業の超お偉いさんらしいぜ。学校には隠してるらしいけど、そういうのってさ、ずっと隠し通せるもんじゃないだろ。特にあいつ、めちゃくちゃ人気なんだし」


「ほ、本当なの?理央」


「うん…。悠斗、家の事で騒ぎ立てられるのが嫌だから、ずっと隠してたの」


「やっぱな…」と裕太は呟いた


 特に最近は、学校終わりの悠斗を迎えに、おじさんの会社の車が校門で待っている事が多かったから、悠斗の事を深く調べた人がいたのかもしれない。


「あいつ、そんな有名な社長の一人息子なら、婚約者の一人や二人、やっぱ、いるんじゃねぇの?」


「こ、婚約者?」


 思ってもみない言葉が裕太から飛び出して、理央は動揺する。


「考えてもみろよ。親同士で決められた結婚。このご時世でも、会社の結び付きで、全然あり得る話だろ?」


 悠斗に婚約者?

 そんな事、考えたこともなかった。

 どうして今まで、そういう可能性を考えなかったんだろう。

 毎日夜まで、おじさんの仕事を手伝いに行く悠斗は、明らかに、私のような普通の高校生とは違う。

 母もおじさんも、私達の関係を知らないのだから、私と悠斗の知らない所でそういう話が勧められていても、不思議な事じゃないのに。


「ま、確たる証拠はないけどな」と、裕太はカラカラと笑うが、理央の胸に嫉妬とは違う、暗い影が落ちた瞬間だった____














< 131 / 221 >

この作品をシェア

pagetop