完璧御曹司の溺愛


 夕食の時間になっても悠斗は帰って来なかった。


「遅いわねぇ、二人共。秀和さんは分かるけれど、悠斗君までこんなに遅くなるなんて…」


 涼子が心配そうに時計に目をやった。

 時計は既に10時を過ぎている。


「瀬戸家の跡取りに生まれたってだけで、高校生のうちから働かされるなんて、同情するよ」と、遠矢は呑気にスープに口をつける。


「市川さん、悠斗の事、何か聞いてませんか?」


 理央は、いつものように傍らに控えている市川に声をかけた


「いえ、今夜は何も聞いてはおりません。私も、いつものように9時頃には、お帰りになられるとばかり…」


 平日なら、9時には帰って来て、少し遅めの夕食をとる悠斗。

 理央はその時間を目安に食事の準備をしたが、帰りが遅いことに痺れをきらした遠矢が、先に食事をとろうと言い出したのだ。


「理央、悠斗君に連絡してみたらどうかしら?秀和さんと一緒なら問題はないはずだけど、少し心配だわ」


「そうだね、してみる」


 理央は席を立って、廊下に出た。

 エプロンのポケットに入っている携帯電話を取り出し、悠斗の携帯にかける。

 けれどいくらかけても、呼び出し音がなるだけで応答はない。


 廊下のドアが開いて、遠矢が顔だけ見せた。


「あいつ、出たの?」


「ううん」


「ま、心配ないよ。親父さんの会社なんだ。息子の事はちゃんと気にかけてるだろうし、そのうち二人で帰ってくるよ」


「うん、そうだね」


 今は涼子もいるからか、遠矢は夕方の時のように、理央にふざけた事は言わなかった。


 その後、食事とお風呂を済ませ、リビングにいる涼子に挨拶をした後、理央は私室へ向かった。




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