完璧御曹司の溺愛




_______コンコンコン



 部屋をノックする音が聞こえる。 



「…………ん」



 理央はその音に目を覚ました。


 携帯電話を握りしめたまま、いつの間にかベッドの上で眠ってしまったらしい。


 部屋の中は、ベッド脇のランプがついているだけで、うす暗い。




______コンコンコン




 ゆ、うと……?


「悠斗っ!?」


 理央はベッドから跳ね起き、もつれる足で部屋の施錠を解き、ドアを開けた。


「悠斗…!」


 悠斗がいる。


 廊下の明かりも薄暗いけれど、間違いなく悠斗が理央の目の前に立っている。



「悠斗……」



 悠斗は、自分で訪ねて来たにも関わらず、理央を見て驚いたような顔をした。


 そして、少し困ったように笑って「どうして、すぐに開けちゃうの?」と言った。




「俺が遠矢だったら、どうするの?」




 理央は、悠斗の胸に思い切り抱きついた。


 身構えていなかった悠斗は、突然、突進してきた理央を支えきれず、理央を抱き込むように、その場に倒れてしまう。


「……っ」


 理央はそのまま悠斗のシャツにしがみついて、動こうとしなかった。

  

「理央?泣いてるの?」




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