完璧御曹司の溺愛

王子様





 その日の夜、理央は、ある高級ホテルにいた。


 母親と一緒に、エレベーターで最上階にあるレストランへと向かう。


 やがて着いたレストランの店内は、豪華なシャンデリアが眩しい程に煌めき、足元には歩き心地の良さそうな赤い絨毯が敷き詰められていた。


 来店しているお客さん、そして、ウエイターも全員正装という出で立ち。


 一般庶民の高校生には到底縁のない場所で、理央は母親の隣でソワソワと落ち着かなかった。


 今夜の理央は、普段は絶対に着ないような、大人びた白いレースのワンピースを着ている。


 髪はアップにするつもりだったが、約束の時間に遅れていた為、簡単な編み込みにした。


 その変わりに母親に、ピンク色の桜の花が、繊細にかたどられた髪飾りを付けてもらった。


 母のおさがりのそれは、小ぶりのパールが一緒に散りばめられた美しい物で、理央のお気に入りだった。





_____今日、学校から帰宅した際、帰りが遅くなった理由を母に聞かれた。


 理央は正直に、目眩で倒れた事を告げた。


 理央の体調が優れない事を心配した母は「今夜の約束は取りやめてもいいのよ」と言った。


 でも、理央はすぐに首を横に振った。


 本当に体調は戻っていたし、きっともうレストランで待っているはずの母親の婚約者に、申し訳ないと思ったからだ____





 既に予約してあるというテーブルまで、ウエイターに案内される。


 かなり約束の時間に遅れていたというのに、そこにいた男性は、理央達親子に気がつくと、嬉しそうに席を立った。



 
< 14 / 221 >

この作品をシェア

pagetop