完璧御曹司の溺愛
顔を上げて、悠斗の背中側にある、ベッドサイドの時計に目をうつす。
早朝5時。
あと、15分もすれば、朝ご飯の準備に行かなければならない。
「…………ん…」
理央が身じろぎした事で、悠斗が目を覚ましたようだ。
もう少し、悠斗の寝顔を眺めていたかったのに…と理央は思う。
「悠斗、おはよう」
「…理央…?」
悠斗は目を細めて、少し意外そうに理央を眺めている。
「………どうして、俺の部屋に理央がいるの?俺、夢を見てるの?」
理央は悠斗を見てクスクスと笑った。
こんなふうに、悠斗が寝ぼけている姿は貴重かもしれない。
「夢じゃないよ。ここ、私の部屋。悠斗、もしかして何も覚えてない?」
「ん……どうだったかな……。言われてみれば、夜中に理央の部屋に来たかもしれない。けど、その先は靄がかかったみたいに曖昧で…」
悠斗は、理央の頬に手を伸ばす。
理央は猫のように、悠斗の指にすり寄った。
「俺、理央に何も変な事してない?」
悠斗は覚えていなくても、理央は昨夜の事を鮮明に覚えている。
酔っていた悠斗は、自制心を保つ為に理央から離れようとしていた。
そんな悠斗を強引に、ベッドに誘い込んだのは理央の方だ。
言葉に詰まる理央に、悠斗は少し焦ったように頭を浮かせる。
「理央?俺、もしかして…」
「ううん。何もしてないよ」
「本当に?」
「うん。悠斗はすぐに寝ちゃった…」
「そっか。ちょっとホッとした。自分でも覚えてないうちに、理央を傷つけていたらどうしようかと思った…」
「そんなこと無い。悠斗はいつだって優しいよ」
頬をくすぐるように触れてくる悠斗の指に、理央は自分の指を重ねながら言った。