完璧御曹司の溺愛



「いや、お前を見てたら思い出してな…」


「何を思い出したの?」


「私の元恋人の事だ」


「元恋人?」


「そうだ。こんな私と結婚の約束をした男だ」


「み、三春ちゃん、婚約者がいたの!?」


「そこ、驚くところか?私にだって、そういう人はいた!」


 ムキなった三春が少し可愛くて、理央はクスリと笑った。


「三春ちゃんの婚約者はどんな人だったの?」


「私には到底、真似出来ない程、優しい男だ」


「真似出来ないなんて…。三春ちゃんも優しい人だよ?」


 正直な理央の言葉に、少し照れた三春はコホンと咳払いをした。


「でも、元って事は、別れちゃったの?」


「そうだよ」


「どうして?」


「知りたいか?」


 コクンと頷く理央を見て、三春はゆっくり話し始めた。


「今から5年ほど前だ。当時、私はその婚約者と同棲していた。だが、ある日の朝、些細な事から喧嘩をしてしまってな。相手は仲直りをしようとしていたが、私は頑なに、顔も見たくないと思ってしまい、早く仕事に行けと、その日は早めに家を追い出してしまったんだ」


 三春は、淡々と話を続ける。


「私もいつも通り支度をして、家を出ようとした時、携帯電話がなった。それは病院からで、婚約者が交通事故で、たった今亡くなったと…」


「えっ……」


 予期せぬ三春の話の結末に、理央は衝撃を受けた。




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