完璧御曹司の溺愛
「涼子さん、理央ちゃん」
「秀和さん、遅れてしまってごめんなさい!」
隣の母が頭を下げたので、理央も一緒に頭を下げた。
「いいんだよ、そんなの。今夜は来てくれて良かった」
秀和は、全然気にしてないと言ったように、愛想の良い笑みを向けてくれた。
その様子に理央は、内心ほっとする。
怒って帰ってしまっていたらと、タクシーの中からずっとドキドキしていた。
「理央ちゃん、久しぶりだね、元気だったかい?」
「はい、おじさん、お久しぶりです」
理央が母親の婚約者、秀和に会うのは二度目だった。
秀和は先代から続く大企業の社長さんだと聞いている。
初対面の時は、理央の家に秀和が来たので、とてもそんなふうには見えなかったが、二度目の対面は、こんなに高そうなレストラン。
「本当に社長さんなんだ……」と理央は心の中で頷いた。
理央の本当の父親は、理央が小さい頃に他界していて、理央は本当の父親を写真でしか見たことがない。
母親の涼子は、理央が幼い頃からずっと、女手一つで理央を育ててくれた。
理央が持病の目眩で入院を繰り返していた時も、母はいつも理央に付き添い、疲れも見せずに温かく励まし続けてくれていた。
その苦労を見てきた理央は、次は母が自分の幸せを見つけてくれればいいと願っていた。
だから、母が再婚すると知った時、理央は自分の事のように嬉しかった____