完璧御曹司の溺愛
何だか、周りから視線を感じる。
昨日の朝は気づかなかったけど、駅の構内を行き交う制服姿や私服姿の若い女の子達が、足を止めて、悠斗を見ているような気がする。
悠斗が人気なのは理央の通う学校に限った事じゃない。
学校の外を歩いていても、こんなに注目されるんだ__
「理央、どうかしたの?」
後ろを振り返り、驚いたような反応を見せる理央を、悠斗が不思議そうに見つめてくる。
「えっ」
「何かあった?もしかして、学校に忘れ物?」
悠斗は理央の姿しか目に入らないように、理央にだけ興味を示し、視線を向けてくる。
「今から一緒に取りに行こうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
もしかして、悠斗に集められているこの視線、本人は無自覚なの?
それって、ものすごく罪深いよ、悠斗…
「夕方は人が多くなるから、理央、俺からはぐれないでね」
悠斗は理央と二人でいられるこの時間を楽しむかのように笑顔を浮かべ、傘を左手に持ち替え、右手で理央の手を握ってくれる。
周りから小さな悲鳴が上がるのにも全く気付かないように、悠斗はそのまま理央の手を引いて、駅の外へと出た。