完璧御曹司の溺愛
「散歩?」
「うん。理央、ちょっと寄り道していかない?理央に見せたい物があるんだ」
無邪気に笑う悠斗に手を引かれて、脇道へと入った。
手を繋いだまま歩いたその先に、見晴らしの良さそうな高台の丘がある。
「ここに何かあるの?」
少し先を歩く悠斗の背中を追いながら、そこへ辿り着いた理央に悠斗がそっと話しかけた。
「理央、ここから下を眺めてみて?」
悠斗にそう言われ、下の景色を一望した時、ハッと息を呑んだ。
視界一面に、それは鮮やかな紫陽花畑が広がっていたからだ。
青、紫、ピンク、白…どれも、しっかり花が開いていて、まるで自分の存在を主張するかのように、美しく咲き誇っている。
「凄い…!綺麗………!」
「でしょ?ここの紫陽花は、毎年本当に綺麗に咲くんだよ。ちょうど今が見頃だね」
「…私、紫陽花を一度にこんなに沢山見たの、初めて…」
「大抵は、道の脇に少し咲いてるだけだから、こんなふうに見られるのは贅沢だよね。紫陽花が花をつけるのは梅雨の間だけだから、尚更目に焼き付くのかもしれない」
悠斗は手すりに手をかけて、理央と同じように紫陽花を見渡しながら言った。