完璧御曹司の溺愛

隠れた真実



 それから数日が過ぎた。


 今日は学校がお休みの為、理央は朝から家にいた。

 涼子と秀和は仕事。

 悠斗もいつもと同じように、秀和と一緒に仕事に出ている。


 理央は午前中、自室にこもり、学校から持ち帰った絵を仕上げる。

 昼食を済ませ、もう慣れてきた屋敷の中を歩いていると、玄関ホールで市川の姿を見かけた。

 花瓶の花に手を加えているようだった。


「紫陽花ですね」


 理央は市川に声をかけた。

 市川は理央に穏やかな笑みで答える。


「えぇ、庭に綺麗に咲いておりましたので、少し摘んで参りました」


 今日は天気がいい。

 雨に濡れる紫陽花もいいけれど、日を受けた紫陽花も見応えがあるだろう。

 紫と青色の小さくて可愛い花を見つめながら、数日前に悠斗と二人で見た紫陽花畑の景色を思い出して、理央は幸せな気持ちになった。



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