完璧御曹司の溺愛


 理央は屋敷の中の窓ふきを担当する事になった。

 とはいえ、この屋敷は元々部屋数が多い。

 昔は大勢の使用人を抱えていたのだろう。

 使われていない小部屋がいくつもあった。


 市川は、今は使われてない使用人用の部屋は除いてもいいと言っていたので、理央は応接室や客室の窓から取りかかる。

 なんなくこなしながら、次の客室を開けると、なんと、机に向かっている遠矢と目があった。


「あっ…」


「あ…」


「ご、ごめんなさいっ」


 理央は慌ててドアを閉める。


 そ、そうだった…

 遠矢さんもこの屋敷のお客様なんだった。


 すぐにドアが開かれて、遠矢が顔を見せた。


「どうしたの?理央ちゃん?まさか、君の方から会いに来てくれるなんて夢にも思わなかったな」


 遠矢はウキウキと楽しそうな様子で、いつものように軽い言葉をかけてくる。


「僕の顔が見たくなったの?それとも、それ以上の事?今は屋敷に市川しかいないし歓迎するよ?」


「ち、違いますっ!私は、市川さんのお手伝いで屋敷の窓拭きをっ…」


「またまたぁ〜、そんな事言って。ほら入って?僕のベッド広いから、二人、余裕で使えるよ?」


 理央は顔を真っ赤にして、持っていた窓ふき用の霧吹きを遠矢の前に近づけた。


「わぁお!!それ、僕にかける気?相変わらず容赦ないねぇ〜」


 遠矢は肩を縮こませて、ため息をつく。


「全く…冗談だよ?理央ちゃんを昼間からベッドに連れ込んだって悠斗に知れたら、僕本当に殺されちゃうからさ。まぁ、君があいつに黙っていてくれたら話は別だけど?」


「どう?」と顔を近づけてくる


「どうもしません!」


「硬派だなぁ…。ねぇ、ところで、あいつとはどこまでいったの?」


「はぁっ?そ、そんなの、教えるわけがないじゃないですか!?」


 理央が眉をつりあげると、遠矢はクスクスと笑う。


「教えるわけないねぇ…、じゃあ一応進んでるんだ?」


「っ!?」


「ごめん、ごめん、気を悪くしたなら謝る。日本の女性は繊細だって事忘れてたよ」



< 159 / 221 >

この作品をシェア

pagetop