完璧御曹司の溺愛
遠矢の部屋の窓拭きを無事に終えた理央は、他の部屋も取り掛かる。
「えっと、ここは…?」
客室かと思い、中を覗くと、沢山の本棚が並んでいる部屋を見付けた。
「書庫?」
背の高い本棚には難しそうな本がところ狭しと並べられていて、部屋の奥には、明かり取りのような小窓があった。
「昼間なのに薄暗い…」
理央は慎重に、部屋の中へ足を進めた。
窓の前には、机があった。
ビジネス用の立派な机と黒革の椅子。
その机の上にはパソコンと、難しそうなファイルの山が積みあげられている。
「ここって、もしかして、おじさんの書斎なのかな?」
勝手に入ってはいけない場所のような気がした理央は、すぐに退出しようとした。
ところが机の上のファイルの山を、身体に引っ掛けて崩し、いくつかを床に落としてしまう。
「あっ…」
バサバサと床にファイルが散らばり、理央は一冊ずつ拾い上げていった。
そして、最後のファイルを腕の中に納めた時、そのファイルの表紙に見知った名前があるのを、理央は見つけてしまう。
【桜井芳樹に関する調査報告書】
桜井芳樹
それは、理央の亡くなった父親の名だった。
「どうして、おじさんが父の調査を…?」
母の前の夫が気になり、おじさんが調べたのだろうか…?
でも、中の書類はかなり古い。
この場所で長い間保管されてきたのだろうか。
紙に劣化が進み、縁には薄い茶色の染みが出来ていた。
表紙に記してある日付は、今から何十年も前のものだった。
理央の知る限り、その頃はまだ、母と秀和は出会ってないはず…。
理央は恐る恐る、そのファイルを開いた。
いけない事だと、自分の頭の中で警告音がなっている。
けれど、母伝いにしか聞いた事のない父の、自分の知らない真実がこの中にあるのなら知りたいと、その衝動を抑えられなかった_____