完璧御曹司の溺愛


 最初のページには芳樹の生い立ちについて記されていた。

 基本的なプロフィールから学歴まで事細かに書かれている。 

 ところが、記載されているのは高校卒業までで、その後を記した書類は、なぜか抜け落ちていた。


 あれ…?

 どうしてここだけ?


 空白というよりは、そこから紙がごっそり抜かれたようになっている。


 そして、続きが始まっているのは、芳樹が涼子と出会った頃からだった。
 
 10年以上前の日付で芳樹は涼子と入籍したとある。

 ところがその後に続くはずの、涼子が自分を産んだという事実はどこにも記されていない。


 おかしいと思った理央は、次のページにあった一文に目をひかれた。


 自分の事が『芳樹の連れ子、理央』と、記載されていたからだ。


 ドクン…

 心臓が低く唸るように動いた。

 理央は信じられない気持ちで口元を手で押さえる。


 連れ子?

 私が、お父さんの?

 一体、どういう事……!?


 ファイルを持つ手が震え始めてきた時、書斎のドアが開かれる音がして、理央はハッとそちらに顔を向けた。


 ゆっくりと、こちらに歩み寄ってくるスリッパの音が聞こえる。


 だ、誰…?

 
 ドクン、ドクン…

 
 静寂が流れる書斎の中、自分の心臓だけが、うるさい音を立てていた。



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