完璧御曹司の溺愛

幸せの意味




 次の日、理央は激しく降る雨を、保健室の窓から眺めていた。


 昨日書斎で、秀和から聞かされた真実に衝撃を受けた理央。

 あの後、どうやって自分の部屋に戻ったのか、夕食の間はどうしていたのか、曖昧にしか思い出せない。

 きっと、虚ろな返事しか出来ていなかったはずだ。


 今日も学校を休んで、部屋に閉じこもってしまいたかった。

 けれど、悠斗が心配すると思い、気持ち一つで制服に着替えたが、昨夜からの理央の様子を心配して、電車の中の悠斗は悲痛そうな表情を浮かべていたから、あまり意味はなかったかもしれない。


 私、この先悠斗に笑顔を向ける事なんて、出来るのかな…。


 悠斗は私の兄だった。

 血の繋がりのある本当の兄。


 私、これからどうすればいいの?


 自分の頬が容赦なく涙に濡れていく。


 知りたくなかった。

 昨夜は何度そう言って、ベッドの中で泣いただろうか。


 どうして昨日、あの書斎に入ってしまったのだろう…

 おじさんに真実を知りたいなんて、言ってしまったんだろう……



 保健室のドアが開かれて、知っている人物が顔を見せた。


 それは、以前から悠斗に恋心を寄せていた水島遥だった。
 






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