完璧御曹司の溺愛
「私、色々考えたの。どうしたら先輩は、あんたよりも私を見てくれるようになるのかなって。皆、普通に喜んでるけど、義理の兄妹って結局は血の繋がりなんてないのよね。あんたと先輩の間には、何の壁も問題もない」
そんな事、遥が心配しなくても、既にその事実は裏返っている。
理央は喉が詰まるような息苦しさを覚えながら、遥の話を聞いていた。
「だから私、先輩と婚約する事にしたの」
その突然の発言に、理央は目を見開く。
「婚約…?」
「そう。私の父、実は先輩のお父様の会社の一つと業務提携を結んでいるの。だから私、父に頼みこんで、婚約のお願いをする事も可能なの」
フフと、遥は楽しそうに鼻をならした。
「先輩は覚えてないかも知れないけど、私、幼い頃に何度か互いの家のパーティーで先輩と顔を合わせていて、その頃から先輩が好きだった。その後、先輩は海外へ行ってしまったけど、この高校に転入してきたって聞いた時は、本当に嬉しかった!」
「昔から、親同士の結び付きが強いの。それに、あんたよりもずっと、私の方が先輩との付き合いは長い。私はあんたより絶対、優位に立てるはずなの!」と遥は憎しみを込めた瞳で理央を睨みつけた。
「先輩に気に入られてるからっていい気にならないで!私、あんたから必ず先輩を奪ってみせるから!」と、遥は何も言わない理央にキッパリと言い切ると、唇の端を上げて笑みを浮かべる。
そして、保健室を出ていく間際に、もう一度理央に振り向いた。
「言っておくけど、将来先輩の近くにいられるのは、あんたじゃなくて私だけ。私と先輩が結婚した時は、式くらいには招待してあげるから楽しみにしててね」
理央の心の傷口に、遥の言葉が容赦なく突き刺さる。
理央の胸はショックで、今にも張り裂けそうだった。