完璧御曹司の溺愛



 真っ直ぐに、こちらへ向かって歩いてくる人の姿を視界に捉えた。


 手足はスラリと長く、男性的な身体のラインは、無駄がない程引き締まっている。

 
 均整のとれたその体型に合わせて作られているかのような、細身の紺色のスーツがとてもよく似合っていた。


 年齢は大学生くらいかと、理央は直感的に感じた。


 軽く後ろに流すように仕上げられた黒髪が、美しいラインを描いていて、とても大人びて見えたからだ。


 誰が見ても、うっとりしてしまいそうなその姿に、現に理央もその男性にしばらく見入ってしまっていたのだろう。


 ハッと気がついた時には、紺に赤いラインがアクセントのネクタイが目の前にあった。


 恐る恐る顔を上げて、理央は言葉を失った。


 髪型こそ違うが、その美しく整った顔立ちは忘れるはずもない。


 今日の放課後、その切れ長の瞳で何度も微笑まれた事を、理央はハッキリと思い出す。


 そしてまた、理央の前に現れた彼は、愛しい恋人にするかのような天使の笑みを理央に向けた。


 
 まるで、時間が止まったようだった___



 彼が、何者なのか…。


 どうして彼が、私達親子の前にこうして現れたのか…。


 今度はちゃんと分かるはずなのに、彼に見惚れてしまっていた理央は、今すぐ答えが出てこない。



「理央、また会えたね」



 絶句したままの理央の耳元で、彼は囁くように声をかけた。


 その優しい声を覚えていた理央の身体は、ビクンと跳ねた。



 彼との思わぬ再会に、身体中から嬉しさがこみ上げていた_____




 




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