完璧御曹司の溺愛

それぞれの想い



 そして、日曜日___


 開園前、理央は悠斗と遠矢と一緒に、入り口のゲートで並んでいた。


 その時、後ろから「瀬戸さん?」と声がかかる。

 そこにいたのは遥だった。


「え、水島さん?」


「やっぱり瀬戸さんね。瀬戸さんも今日、ここに来てたんだ」と、彼女はニッコリと微笑んだ。


「水島さんも?」


「うん、そのつもりだったんだけどね、さっき友達から急にドタキャンされちゃって…」


 遥が残念そうに目を伏せる。

 そんな彼女に、理央の隣にいた遠矢がすかさず声をかけた。

  
「あれ、理央ちゃんのお友達?そうだ、良ければ僕達に混ざらない?チケットも一枚、余ってるんだし!」


「でも、せっかく、このメンバーで遊びに来てるのに、私が入っちゃうと邪魔になるから…」と、遥は遠慮がちに手を振った。


「いいじゃない。ね、理央ちゃん、遥ちゃんも混ぜてあげよ?」


 遠矢の言葉に、理央は「はい」と頷いた。

 内心、気持ちが重くなったけれど、遥を追い返すなんて事は、理央には出来なかった。


「良かったら、水島さんもぜひ…」


「じゃあ、せっかくだし、お言葉に甘えていいですか?」と、遥は嬉しそうだった。


「水島遥です。理央さんとは同じ学校の同級生なんですよ」と、遥は軽く自己紹介をする。


「へぇ、理央ちゃんの学校は美人が多いんだねぇ。僕も、悠斗みたいに転入したいなぁ」と、遠矢は羨ましそうに頬を緩める。


 遥は、ずっと黙ったままでいる悠斗に、上目遣いで視線を送った。


「もしかして先輩は、私がいたら迷惑でしたか?」


 今時のメイクと洋服で着飾ったプライベートの遥は、学校で見る時よりも大人っぽくて、異性なら誰が見ても声をかけたくなるような、清楚な美人に見える。


「いや、迷惑ってわけじゃないよ?理央がいいなら、俺は気にしないけど」


 実際悠斗も、そんな彼女を見て、嬉しそうに微笑み返す。


 まるで王子様のような、優しく、品のある雰囲気を纏う悠斗に、上目遣いを送っていた遥の方が、みるみる顔を赤くさせてしまった。


 そんな二人の姿を見て、理央の胸は、絞られるように苦しくなっていった____







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