完璧御曹司の溺愛
もう何度目か分からない、耳を劈くような轟音が人の悲鳴とともに理央の頭上を駆け抜けていった。
そのたびに、こめかみの辺りがキシキシと痛むのを、理央は堪えていた。
理央の視界に広がるのは大勢の人の波と、過激に動き回るアトラクションの数々。
理央はその迫力に一人、圧倒されていた……
母が幼い私を、一度も遊園地に連れて行ってくれなかった理由が今なら分かる気がする。
目眩持ちの私に、この場所は向いていなかったからだ____
「ねぇ、理央ちゃん!あれ、乗ろう?」
目を輝かせた遠矢が指を差したのは、頭上を駆け抜けていくたびに理央を深刻な頭痛に陥れている、この遊園地の目玉の絶叫系コースター。
身体を座ったまま宙吊りにされ、その椅子ごと回転させながら、ねじりあげられたレールをもの凄い速さで駆けていく。
理央にとってはもはや、拷問だった…。
「むっ、無理ですっ!絶対無理!」
理央は叫ぶように拒絶する。
「えぇ〜!何でぇ?せっかく来たんだよ?怖がらずに乗ろう?」
「ごめんなさい。私、あぁいうの苦手で…」
「絶叫系は苦手?んー、仕方ないね。じゃあ、あのコーヒーカップは?カップルに人気があるんだよ?」
遠矢が指をさす先に、コーヒーカップの形をした乗り物が見える。
恋人が二人で乗る姿を見ていると、カップが輪を描きながら動き始めた。
中心にある軸の部分を回すと、カップ自体の回転数が上昇するようで、グルグルと回して楽しんでいる。
「……っ」
まだ乗ってないうちから脳がグラグラと揺れる。
同時に、軽い吐き気が込み上げてくる。
「ご、ごめんなさい。あれもちょっと…」
「えー、あれは絶叫系じゃないし平気でしょ?」
「でも、目が回って……」
「軸には触らないようにするから!ね、行こうよ!」
遠矢が理央の腕を掴もうとすると、悠斗が庇うように理央の前に立った。
「理央はこういうの、駄目なんだよ」