完璧御曹司の溺愛
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「理央ちゃん?顔色悪くない?暑くなってきたし少し休憩しよっか」
「そうですね」
悠斗達と離れてからしばらくした頃、遠矢は園内の地図を広げながら、休憩出来そうな場所を探してくれていた。
初夏の日差しが容赦なく照りつけ、理央の頭痛は激しさを増す。
体調はかなり思わしくないけれど、気力だけで足を動かす。
悠斗、今頃、どこで何をしているのかな…
さっきから悠斗と背丈の似ている人を見つけては、無意識に視線を送ってしまう。
遥と一緒に歩いているのを見たくない気持ちと、純粋に悠斗に会いたい気持ちが複雑に交差する。
「ねぇ、理央ちゃん?そんなにあいつが気になる?」
「えっ」
遠矢は地図の上から視線を理央に移した。
面白くなさそうな顔で理央を見つめる。
「今日は僕と理央ちゃんの思い出作りなんだから、あいつの事は忘れてよ。理央ちゃんは僕に手を引かれて、ここまで来たんだよ?」
「そ、そうですね。ごめんなさい…」
「謝られると、余計に複雑なんだけどな…」
遠矢は少し切なそうに笑った。
「理央ちゃんはどうして僕に付いてきたの?僕、理央ちゃんを誘う気はあったけど、まさか付いてきてくれるとは思わなかったんだけど…」
「それは…」
「君が僕に乗り換える気がない事は分かってるよ。そして、悠斗と喧嘩でもないんだよね?でも、それなりの理由があるはずでしょ?まさかとは思うけど、悠斗を遥ちゃんに譲るつもりなの?」
遠矢の考えが的確過ぎて、理央は何も言えなかった。
「君が黙ってるって事はそういう事なの?」
遠矢はいつもふざけているのに、たまに真面目な顔で理央の本心をつくような事を言う。