完璧御曹司の溺愛
「何があったのか分からないけど、君はそれでいいの?本当に、あの子の思うままになっちゃうかも知れないよ?」
水島さんはいつだって、悠斗を一途に想う気持ちを、私に強く訴えてくる。
数日前、保健室で会った時もその気持ちをぶつけられ、辛い想いをした反面、実は少し羨ましい気持ちもあった。
もし水島さんが私だったなら、この燻った気持ちを真っ直ぐに貫き通せるんだろう。
そのくらい彼女は心の強い人。
私みたいに迷ったりは、きっとしない。
「彼女は本気で悠斗を自分のものにしたいみたいだし、今頃は、彼女に強く迫られていてもおかしくなさそう」
理央は目を閉じた。
悠斗が水島さんと二人きりでいる。
そうさせたのは自分なのに、お腹が引き裂かれそうなくらい痛い。
「でも、あいつは僕と違って、簡単に落とされない奴なんだった。あぁ、でも彼女は彼女で、結構男慣れしてそうだし。美人で可愛くて、男なら誰でも誘惑されそうな感じしない?」
「…っ」と、理央が顔を歪めたのを遠矢は見逃さなかった。
「あいつを探しに行きたい?でも、全てが手遅れだったらどうするの?」
「手遅れ?」
「そう。悠斗がもう、遥ちゃんに気持ちを寄せていたら?君は素直に受け入れられるの?」
「それは…」
私が悠斗の気持ちを拒絶した時、悠斗は言ってくれた。
自分は理央の気持ちを一番に尊重するからって。
私の幸せを想ってあげるって。
だから私も、悠斗が誰かと一緒になるなら、そうするつもりだった。
だけど、私はやっぱり、悠斗が誰かのものになるのは嫌。
あの声も温もりも優しい笑顔も、向けてくれるのは全部自分がいい。
誰も見ないで、触れないで欲しい。
悠斗はいつでも完璧な人。
強くて優しくて、自分よりも人の幸せを優先出来る人。
でも私は悠斗みたいに強くも優しくもなれない。
悠斗を幸せにしてあげるのは、いつだって私がいい。
理央は悠斗を探しに走り出そうとする。
その腕を、遠矢はひいて止めてくる。
「どこ行くの?」
「離して!やっぱり行かなきゃ!」
「僕は、君を行かせたくない」
「遠矢さん!」
「君と思い出を作るだけなんて、そんなのはただの口実だよ!」