完璧御曹司の溺愛
目の前に広がるのは、初めて見る遠矢の真剣な顔つき。
理央は返す言葉を失った。
「僕はいつも冗談を言って君をからかってるけど、君を自分のものにしたいっていうこの気持ちは本物。悠斗には僕の嘘や冗談はすぐにバレちゃうから、いつも必死に、僕から君を守ろうとしてたよね」
遠矢は虚しそうに笑うと、理央に視線を向けた。
「ちゃんと分かってる?そんな悠斗から離れたのは、理央ちゃん自身ってこと」
「君を守る王子様は、もうここにはいないんだよ」と、遠矢はいきなり理央を抱きしめてきた。
悠斗とは違う男の人の香りがして、理央の中に危機感が生まれる。
「と、遠矢さ…やめて…っ…」
理央は力の限り、遠矢の胸を押した。
でも、理央の身体は全く力が入らなくなっていた。
霧がかかるように、視界が隅の方からジワジワと白くなっていって、次第に意識が遠のいていく。
「君が、付け入る隙を作ったのがいけないよ」
遠くで遠矢が何かを言っている。
でも、酷い耳鳴りのせいで何も聞こえてこない。
聴覚も視覚も遮断され、ふと頭の中に浮かぶのは、悠斗と一緒に暮らしていた夢の中の光景だった。
あの夢に出てきた紫陽花は、悠斗と現実で見た紫陽花畑と同じように、色鮮やかで美しかった。
まるで現実のような、夢の中の世界と同じように、悠斗と一緒にいたかった。
二人で同じ家に住んで、私が帰ってきた時には、「お帰り」って笑顔でドアを開けてくれて、それから優しく抱きしめてくれて、そんな生活を年老いるまで続けて…
そんなふうに、ずっとずっと幸せに、悠斗と一緒に暮らしたかったな………
そう思ったのを最後に、理央の意識は途絶えていった_____