完璧御曹司の溺愛
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再び悠斗side
「それも君の作戦?すごく大胆な事を思いつくんだね」
悠斗はそう呟くと、遥の唇が触れる直前に、グッと遥の耳に顔を近付けた。
そして、口角を上げた薄い唇で、その小さな耳にそっと囁く。
「俺と理央を思い通りに引き離せて、今どんな気分でいるの?」
「えっ…」
「だって事前に、遊園地のチケットを遠矢に渡していたのは君でしょ?」
遥の顔から、サァッと血の気が引いていった……
「な、何を…言ってるんですか?先輩…」
悠斗はそんな遥を見つめながら、可笑しそうにとクスクスと笑った。
「そんなに驚く事かな?理科室の時もそうだったけど、君は誰かと手を組まなきゃ、何も出来ない子じゃない?」
そして、動揺して震えだした遥の指の下から、自分の手をスッと引き抜いた。
「わ、私は、遠矢さんと、この遊園地で初めて会ったんですよ?」
「ふぅん。俺は、そんなふうには見えなかったけど?」
遥の綺麗な顔がピクリと引きつる。
「ゲートの前で、遠矢は初対面の君に、遥ちゃんって呼んだよね?理央は君をずっと水島さんと呼んでたのに、あいつはどうして、君の下の名前を知ってたの?」
「そ、それは…」
「それに、遠矢が持っていたチケット、最初から4枚用意されてるのもおかしかった。まるで、君が後から合流する事が決められているようで。遠矢はずっと外国育ちで、日本に知り合いがほとんどいない。それなのに、チケットを知人にもらったなんて、話が出来過ぎてる」
「……っ」
「いつ君たちが知り合ったのかまでは分からないけど、君の最大の誤算は、嘘が世界一下手な俺のいとこに、この話を持ちかけたってところだね」
遥はしばらく黙っていたが、観念したのか、やがて小さく口を開いた。
「……私が、遠矢さんと出会ったのは、先輩が学校を休んだ日です。体調を崩して休んでる先輩が心配で、家を訪ねに行ったら、遠矢さんが出て来て、彼は理央さんを好きなようだったから、協力を持ちかけました」
「チケットを使って俺と理央を遊園地に誘って、当日は俺達を引き離す作戦?見事に君の思い通りになったね」
悠斗は怖いくらいの笑みを浮かべながら言った。
「もう気は済んだでしょ?」と、席を立とうとする悠斗の腕を遥は掴んだ。
「待って下さい!先輩、私を覚えてますか?幼い頃、私、先輩と会った事があるんです!その時からずっとずっと、私は先輩が好きで、どうしても諦められなくて…、それでっ…」
「…それで、俺に近付いてどうだった?仲良くなれた?こんなふうに迫れば、俺が君を好きになると思った?」
憤った表情の悠斗を見て、遥はうつむいて首を振った。