完璧御曹司の溺愛
理央が俺の前から黙っていなくなったのは、あの子のせいでも遠矢のせいでもない。
最終的に、理央自身が自分で考えて、行動を起こしたものだった。
理央を守ると約束したのに……
カフェを出た悠斗の視界の先に、人だかりが見えた。
嫌な予感がした悠斗は、その人の群れに向かって走り出す。
人混みを掻き分け、その中心にいた人物を見た時、悠斗の身体に鋭い衝撃が走った。
理央の名を必死に叫ぶ遠矢と、遠矢の腕の中で意識を失い、ぐったりしたまま動かない理央の姿。
「理央っ!!」
悠斗は遠矢を跳ねのけて、理央の身体を抱いた。
「理央!しっかりしろ!理央!!」
悠斗が叫んでも、理央は瞼を固く閉じたままピクリとも動かなかった。
顔は、全ての血の気がひいたように青白い。
「ゆ、悠斗…理央ちゃん、急に、倒れて…」
遠矢は酷く動揺し、泣きそうな顔をしながら言った。
「僕、どうしたら…」
「……救急車は?」
「え?」
「救急車は呼んだのか!?」
「よ、呼んだ…」
悠斗は何かに気がついたように、理央の口元に耳を当てた。
「ゆ、悠斗?」
「息してない…」
悠斗の言葉に、遠矢は更に絶望的な顔をする。
「そんな…う、嘘だろ…理央ちゃん…」
悠斗は、理央の胸に手を当てて、すばやく人工呼吸を試みた。
「理央…」
理央の鼻をつまんで、冷たい唇に息を吹き込む。
悠斗の手のひらが、強く理央の胸に食い込んだ。
「理央、理央!」
額から玉のような汗が噴き出してくるのも構わずに、悠斗は何度も理央の名を呼ぶ。
それでも理央の体は、何の反応も示さなかった。
「頼む!理央、息をしてくれっ!」
悠斗の痛烈な叫び声が、賑やかな遊園地の中に響いていった_____