完璧御曹司の溺愛



 涼子は、理央と悠斗を交互に眺めると、フフフと頬を緩めた。


 秀和と悠斗は、そんな涼子に不思議そうな顔を向ける。


 どうやら涼子は、悠斗に対する理央の動揺を読んだようだ。


 理央にだけ聞こえるように、「素敵な人だものね…」と、囁く。



 幼なじみにまで、だっせぇ扱いされた私。

 学校一の人気を誇る王子様、瀬戸先輩。


 まるで、月とスッポン___


 私と先輩じゃ住む世界が違いすぎる。

 そして、理央は気が付いた。


 瀬戸先輩は私達が近く、兄妹になるという事実をとっくに知り、受け入れていた。

 
 だから今日の理科準備室で、裕太と遥から侮辱を受けている私を庇ってくれた。


 倒れた私を保健室へ連れて行き、身体の心配までしてくれた。


 それはいずれ、妹となる私へ、兄が行動を起こしたものだったのなら納得がいく。


 私も、ずっと母と二人きりだった。

 
 母に好きな人が出来て、おじさんや先輩が家族になるのはとても嬉しい事だ。


 だから、先輩の私への好意的な態度は、新しい家族に向けての愛の形に過ぎない。


 そっか、そういう事だったんだねと、自分自身に頷いた。


 これでやっと、咲ちゃんや三春ちゃんに納得してもらえそうな気がする。


 妙に、胸の中が軽くなった理央は、もう食事を終えそうな三人に遅れをとらないよう、慣れないナイフとフォークを必死に動かした。






 メインの食事を終えると突然、悠斗は席を立った。


 理央の隣まで歩いて来たかと思うと「テラスへ行かない?」と声をかけられる


「えっ…」


 まさか、悠斗からそんな誘いを受けると思っていなかった理央は、かなり動揺してしまう。


 その慌てぶりを見て、秀和は悠斗を制すように言った。


「悠斗、理央ちゃんが嫌がってるじゃないか」


 先輩のような人に誘われて、嫌悪を抱く異性がこの世にいるだろうか、と、どこか冷静に思っていると、涼子がクスリと笑って言った。


「秀和さん、理央は嫌がってるわけじゃないの。ただ、驚いてるだけよね。理央、せっかくだから行ってらっしゃい。仲良くしてもらうのよ」


涼子に背を押され、理央はおずおずと席を立った。



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