完璧御曹司の溺愛
終章 打ち上げ花火
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一ヶ月後。
理央は悠斗と、地元のお祭りに訪れていた。
「わぁ…すごい人…!」
理央は、少し後ろから遅れて歩いてくる悠斗に振り向いて、笑顔で叫ぶ。
「悠斗、早く!」
「…ねぇ、理央?今からでも遅くないから帰らない?夜からの花火は、家のテラスからでも見えるんだよ?わざわざこんなに人の多いところまで来なくても…」
悠斗は、先日退院してきたばかりの理央の体調を心配して、いい顔はしない。
「大丈夫だよ?本当に体調は良くなったの。食欲も睡眠もとれてるし、それでも気分が悪くなったら、ちゃんと言うから!」
悠斗は、嬉しそうにはしゃぐ理央を見ても、不安そうな表情を崩さない。
「私が前に住んでた場所、お祭りがなかったの。だから、一度でいいから、こういうところに来てみたくて。ここには絶叫系コースターなんてないし、ちょっと雰囲気を味わうだけ、だめ?」
無意識に上目遣いで、悠斗に視線を送る。
「その表情、ずるいな。他の男になんか見せたら、許さないから」
「えっ」
動揺する間もなく手を握られ、そのまま悠斗は理央の手を引き、歩き出す。
「ゆ、悠斗?」
「浴衣って、歩きにくいでしょ?転ぶと危ないから」
「あっ、そうだね」
涼子が今日の為に用意してくれた理央の浴衣は、薄い水色の生地に、小さな朝顔がいくつも描かれているものだ。