完璧御曹司の溺愛


 悠斗は完璧な人だもん、私と兄妹なわけがないはずだ…。



 数日前、悠斗は自分の母親から真実を聞き、理央の元へと帰ってきてくれた____


 悠斗の母、百合子は、理央の父、芳樹を愛するが故に、当時、秀和が依頼した探偵の目を欺いていた。

 妊婦の格好までして、芳樹の子を身ごもっているフリをしていたのだ。

 そうまでして百合子は芳樹と一緒になる事を望んでいたが、芳樹は幼い息子を置いて家を出てきた百合子が家族の元へ帰る事を望んでいた。

 そして、芳樹自身も、まだ幼い理央を連れていたこともあり、百合子は瀬戸家に帰ってきたそうだ。

 その後、何年かして秀和と百合子の離婚は成立。

 百合子は、芳樹が結婚した事実を知り、それからは一切、会わなかったのだと言う。


 そして、DNA検査の結果、理央と悠斗は実の兄妹ではない事が正式に証明された。


 結局、理央の本当の母親が誰なのかは分からないまま。


 それでも理央は、悠斗と血の繋がりはないと聞かされた時、涙を流して喜んだ。


 母親が誰かなんて、理央にはどうでもいい事だった。


 血の繋がりがなくとも、自分には秀和と涼子という優しい両親と、悠斗という世界で一番大切な恋人がいる……。



 隣の悠斗をチラリと盗み見る。


 端正な横顔に、相変わらず簡単に胸が高鳴る。


 もう見慣れているはずなのに、理央は毎回、一目惚れをした少女のように、悠斗にときめいてしまう。



 整った容貌も、柔らかな黒髪も、スタイルのいい長身も、聡明さや、強く優しく誠実なその人柄も、独占出来るのは理央だけ。


 理央はそんな贅沢な幸せを、改めて、噛みしめるように感じていた。




< 200 / 221 >

この作品をシェア

pagetop