完璧御曹司の溺愛


 花火が上がる時間が近付いて、次第に人も多くなってきた。


 悠斗は人混みに流されて、理央とはぐれてしまわないように、しっかりと理央の手を握ってくれている。


 二人は花火が上がる河川敷を目指して歩き出す。

 半分くらい歩いたところで、理央の片方の下駄が突然抜けてしまった。


「あっ……」


 悠斗は手際よく、理央が履いていた下駄を拾い上げると、理央の足元に置いてくれた。


「履かせてあげるから、俺の肩に手を置いて?」


「えっ…、じ、自分でやるから」


「履くの慣れてないでしょ?ほら、足を出して?」


 躊躇したまま、なかなか動かない理央に「理央?」と悠斗が、理央を見上げてきた。


 生温い真夏の夜風に吹かれて、悠斗の美しい髪がサラサラと揺れている。

 その黒い髪の間から目が合って、理央は更に戸惑ってしまった。


「…一体、いつから?」


 悠斗は理央にそう問うと、返事も待たずに理央を突然、横抱きにした。


「ゆ、悠斗!?」


 急に視点が変わり、理央は声を上げる。


「ジッとしてて。理央、俺に隠してた事あるでしょ?」



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