完璧御曹司の溺愛
人の流れに逆らうようにしながら、悠斗は今来た道を、理央を抱えて引き返した。
やがて、人混みから少し外れた小さな神社の境内までたどり着くと、石段に理央をそっと降ろす。
「一体いつから、足を痛めてたの?」
やっぱり、気づかれた……
履き慣れない下駄の鼻緒が皮膚に擦れて痛くて、理央は下駄を浅めに履いて歩いていた。
それが、脱げてしまった原因だった。
「えっと……悠斗とお店を回ってる時から…」
悠斗はかがみこんで、理央の足の状態を確認する。
「こんなになるまで、どうして黙ってたの?」
悠斗は困ったような顔をして、理央を見上げた。
「花火、悠斗と見たかったから…。私がこんな足だって言ったら、すぐに帰ろうって言ったでしょ?」
「まぁ、そうかもしれないけど…」
「悠斗と二人でちゃんと出かけるのは初めてで、私、凄く楽しみにしてたの。だから言いたくなかった……」
「理央…」
「悠斗はいつも、私の体調を心配してくれて、それは凄く嬉しいけど、少しくらい無理しても譲れない物もあるの。今夜は悠斗と一緒に花火が見たかった。悠斗と過ごす時間はこの先きっと沢山あるし、私のわがままなのかもしれないけど、今のこの瞬間は、今しかないから…だからっ…」