完璧御曹司の溺愛
悠斗は黙って、必死な理央の声に耳を傾けている。
「花火って、パッと開いてすぐに消えちゃうから。そんな時間さえ、無駄にしたくなくて…!」
悠斗は、髪をかきあげながら、立ち上がる。
「無駄だなんて…。こうして二人で一緒にいれば、どこにいたって無駄じゃないでしょ?」
「悠斗…」
「ここまで来て帰ろうなんて言わないよ。おいで、河川敷へ行こう?おんぶで連れてってあげるから」
「でも、結構距離があるから悠斗がしんどいよ。私、頑張って歩くから……」
「あれ?いつか言わなかったっけ?理央の体は華奢だから、負担にはならないよ?」
「でもっ……」
理央がそう言った時、ドン!と花火が上がる音がした。
「あっ……」
音のする方に二人で目を向けると、遠くの夜空で赤や青などの様々な色の花火が、続け様に上がっているのが視界に入る。
「わぁ…!綺麗……!」
「驚いた…。この神社、実は隠れスポットなのかもしれない。少し遠いけど、ここからでも十分、花火が綺麗に見える」
「うん、そうだね。これなら、移動しなくても大丈夫そうだね!」
笑顔の理央に、悠斗は嬉しそうに笑みを返し、理央の隣に腰掛けた。
そうして、二人はしばらくの間、花火を眺めていた。