完璧御曹司の溺愛

「あ、今度は紫!」


 悠斗は、はしゃぐ理央の横顔を見つめていた___

 いつかレストランのテラスから夜景を見た時も、今夜と同じ状況だった事を思い出す。

 あの時も、理央は目の前に広がる夜景に見入ってしまい、しばらく自分を見てはくれなかった。

 あの時、近くで理央の横顔を眺めていられるだけで十分だと思ったけど、理央を自分の物に出来た今では、理央の心を簡単に攫っていく目の前の花火が煩わしくもなる。


「悠斗、どうしたの?」


 悠斗の視線に理央が気が付く。


「理央の顔をこうして眺めてるのも悪くないけど、こっちも向いてくれないかなと思ってた…」


「えっ」


「やっぱり、花火なんて連れて来なければ良かったかな…」


 悠斗は真顔で理央を見つめている。


「も、もしかして悠斗、花火に嫉妬とか?」


「そうだよ。やっと、理央を手に入れる事ができたのに、まさか横取りされるなんて…」


「悠斗、大袈裟だよ?相手は花火だよ?」


 理央は可笑しくて、クスクスと笑ってしまった。


「おかしい?でも全然、大袈裟な事じゃないよ。俺は真剣に嫉妬してる。さっき、嫉妬させないで?って言ったばかりでしょ?」


 悠斗はそう言って、理央の腰に手を回し、自分に引き寄せた。


「俺がどれだけ理央を愛してるか、理央はちゃんと自覚してる?」



 夜景や花火に嫉妬なんて、自分でもどうかしてる。

 理央に恋する前の自分には、とても考えられない事だ。

 それ程までに、理央は俺を狂わす。

 理央の事が好きすぎて、理央だけを満たしてあげたくて、周りの事なんて一切どうでもよくなる。

 どうする事が、理央の幸福に繋がるのか、その方法ばかりを模索してしまう。


 そしてこの先、理央だけを、もっともっと甘やかしたい。

 理央の思考を、自分いっぱいに染め上げたくて仕方がない。





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