完璧御曹司の溺愛
「悠斗だって、私達に残って欲しいなんて思わないさ。実際、悠斗は何と言っていたんだ?」
「そ、それは…自分の事は気にせずに出かけて来て欲しいと言っていたけれど……」
「な、そうだろう?」
「でも、色々と心配だわ?」
「大丈夫だよ。君は少し気にしすぎだ」
「秀和さん……」
「お母さん、私、残ってもいい?」
今まで二人のやり取りを黙って聞いていた理央の突然の発言に、二人は驚いた様子で理央に視線を送った。
「理央?」
「理央ちゃん?」
「私もお母さんと同じ、悠斗の事が心配なの。私はご飯も作れるし、身の回りのお世話も出来るから、市川さんも留守にして大丈夫だし」
「でも…理央ちゃん、初めての家族旅行、楽しみにしてただろう?」
「楽しみにしてたけど、それは次の機会にとっておくね?それよりもこの旅行、お母さんとおじさんの新婚旅行も兼ねてるんだから、二人で仲良く行ってきて欲しいの」
「理央ちゃん、一緒に行かないのかい…?」
理央を溺愛している秀和は、肩を落としてポツリと呟く。
一方で、涼子は安堵したように頬を緩めた。
「そうね。理央が残ってくれるのなら安心だわ。理央、悠斗君のお世話、頼めるかしら?」
「うん、任せて!」
「そうと決まれば急がないと」
涼子は、しょんぼりとする秀和の腕を無理矢理引っ張り、市川の手配したタクシーに早々と乗り込んだ。
「理央、留守番お願いね。お土産買ってくるから」
「うん、気をつけて。楽しんできてね」