完璧御曹司の溺愛


「理…央………」


 名を呼ぶ声が聞こえて、理央は目を覚ました。


 ハッと、顔を上げると、悠斗が横になったまま私を見ている。


「……悠斗、目が覚めた?」


「……どうして、ここにいるの?」


 目が覚めたばかりなのか、悠斗は理央を虚ろに見つめていた。 


「俺、ここには来ないでって言ったよ?」


 いつもならどこまでも、理央を甘やかせてくれる悠斗。

 理央が戸惑うくらい近付いて、甘い言葉を囁いて、羞恥に染まる理央の反応を楽しんでいる。

 でも、今回だけは、悠斗は理央に近付くなと言う。

 どこか怒ったような呆れたような表情だ。


 それは、理央に風邪をうつしたくないからだと分かっていても、理央は悲しくて仕方がない……。


 どんな理由があっても、悠斗に必要とされないのは嫌だった……。


「言ったけど、私、どうしても、悠斗をほっとけない……」


 悠斗は、深いため息をついた。


「気持ちは嬉しいけど……」と、理央の指に絡んだ自分の手を引き抜こうとして理央は慌てた。


「嫌っ!」


 理央は、悠斗の指をきつく握って離さない。

 変わりに、悠斗は口を開いた。


「理央、俺から離れて」


 離れてと言われ、悠斗に一気に突き放された気持ちになり、理央は泣きたくなった。


「…悠斗だって、私が熱を出したら、同じ事をするくせに……」


 理央は震える声で、悠斗に告げる。



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