完璧御曹司の溺愛
「私と同じように心配して、旅行に行くのをやめて、私に駄目って言われても、こうやって側に居るはずだよ?どうして、私は駄目なのっ!?」
「理央…」
「悠斗に風邪をうつされたっていい。お願い、側で看病させて?悠斗が苦しそうなのに、いつもと同じように過ごすなんて出来るはずない」
珍しく声を荒げた理央だったが、それでも悠斗は、理央の指の間から自分の手を抜き取った。
「悠斗っ…」
その指で理央の頬に優しく触れる。
「涙…。泣かなくたって、いいのに……」
「あっ……」
悠斗は、自分でも知らないうちに流れ出ていた理央の涙をそっと拭ってくれた。
「理央には負けたよ…。そんなふうに泣くなんてズルいな……」
「悠斗…」
「可愛い…」と、悠斗がいつも通りにニコリと笑ってくれて、理央は心からホッとした。
「じゃあ、理央の気が済むまで看病してくれる?俺の事…」
「うん!」
そして今、気が付いた。
さっきまで、悠斗と離れたくなくて気付かなかったけど、熱にうかされた悠斗の表情はすごく色っぽい。
汗のせいで黒い髪は濡れていて、いつもより火照った肌にしっとりと張りついている。
今更ながら、意識しだしてしまう。
悠斗は熱で辛いはずなのに、私、何考えてるの?
「理央、どうかした?顔赤いけど、まさか、うつったんじゃないよね?」
心配した悠斗が、指先で理央の額に触れようとしてきた。
「あ、熱がある俺が触っても意味ないよな。そうだ、体温計…」
悠斗はサイドテーブルにおいてある体温計に手を伸ばす。
「ゆ、悠斗っ!大丈夫だから!あ、そうだ!お腹すいてない?朝から何も食べてないよね?ちょっと待ってて!」
理央は思い出したように立ち上がると、パタパタとスリッパをならして、悠斗の部屋を飛び出した。