完璧御曹司の溺愛
しばらくして、理央はお粥を乗せた盆を持って、悠斗の部屋の前に立った。
「はぁ…」
さっきは慌てて部屋から出てきてしまったけど、悠斗はお腹が空いてるなんて、一言も言わなかった。
「どうしよう。食べてくれなかったら…」
そっとドアを開けると、悠斗は身体を起こしていた。
理央は悠斗のベッドに近付いて、お粥をサイドテーブルの上に置く。
「あのね、お粥を作ったの。お腹空いてないかもしれないけど、一口だけでも食べて?」
「うん、食べるよ。ありがとう」
悠斗はニコリと笑って布団から出ると、理央の方を向いてベッドに腰掛けた。
良かった……
ところが、悠斗は理央の顔をニコニコと見つめたままで、理央が作ったお粥に手を伸ばす様子が見られない。
「ゆ、悠斗?」
「ん?」
「食べないの?もしかして、お粥、苦手だった?」
「苦手じゃないよ。理央が作るものなら何だって大好き」
「じゃ、じゃあ?」
理央が戸惑う様子を見て、悠斗はクスクスと笑った。
「理央、さっきはあんなに意気込んでたのに、もしかして看病ってした事ない?」
「えっ?」
「俺、理央が食べさせてくれるの、待ってるんだけどな?」
「えぇっ!」
理央は驚いた。
まさか、私が食べさせてくれるのを待ってたなんて。
「小さな頃、よく母親にしてもらわなかった?」
理央は当時を振り返る。
確かに、熱を出すとお母さんがお粥を食べさせてくれたっけ?
お粥って熱くて火傷しそうで、だからお母さんはフーフーと息をかけて食べやすいように冷ましてくれて、それからアーンって口の中に……
それを、今から悠斗にってこと…!?
「あれ?食べさせてくれないの?」
悠斗は、状況を理解して顔を赤くさせる理央の反応を、嬉しそうに眺めている。
「や、やる…」
理央はお粥に手を伸ばし、小さな碗にお粥を取り分けた。