完璧御曹司の溺愛
「私の?」
「うん。理央がね、俺から離れていくんだ。俺が何度、名前を呼んでも振り向いてくれなくて、駆け寄って腕を掴もうとしたら、どういう訳かすり抜けてしまった…」
悠斗はその時の寂しさを埋めるように、理央を抱きしめる力を少し強める。
「悠斗…私は、ちゃんとここにいるよ」
理央は、自分のお腹にまわされた悠斗の手の甲に、自分の手を重ねた。
「うん。俺、今すごくホッとしてる。あんなに理央に風邪をうつしたくないって言っておきながら、理央が側にいると触れたくてしかたがない」
「私も同じ気持ち。悠斗と触れ合ってると、ドキドキするし、安心もするの。私ね、悠斗とこうして一緒に居られて毎日本当に幸せだよ?」
理央は素直な気持ちを言葉にした。
悠斗と出会った頃、恥ずかしさが勝って、なかなか自分の想いを言葉に出来なかったけれど、今は理央のペースで悠斗への想いを口にする。
自分も伝えたくて仕方がないし、そうする事で、悠斗がとても嬉しそうにしてくれるから。
「……ねぇ、理央。理央はどうして、こんなに可愛いのかな?」
けれど、理央の言葉が、悠斗のエンジンを稼働させてしまったようだ。
気付いた時には、横から吸い込まれそうな強い眼差しで見つめられている。
悠斗の元々の端整な顔立ちに、熱からくる色香が漂い、このまま後ろから抱きしめ続けられると、悠斗よりも高い熱が出そうだ。
まともに悠斗を見ていられなくなった理央は、サイドテーブルのお粥に目を移した。
「お、お粥、もういいの?まだ、二口しか食べてな…」
「理央が欲しい…」
理央の言葉の上から被せるように、耳元で囁かれ、更にキツく抱きしめられる。
自分の身体が、内側からグンと熱を上げたのが分かった。
「嫌?」
艶やかな瞳で顔を覗き込まれ、理央はクラクラした。
今日の悠斗はいつもの百倍増しで色っぽいのに、本人は無自覚だから質が悪い。
「……ゆ、悠斗…熱があるのに、駄目だよ…」
私だって、悠斗が欲しいよ。
悠斗とこんなふうに密着して、自分を求めてやまないように見つめられて、理央にだって理性の限界がある。
さっきから、悠斗と同じように身体が火照ってきてる事、悠斗は理解してくれてる?
そんな事を考えてるうちに「理央…」と、名を呼ばれていた。
頬に触れられると同時、唇同士が重なった。
「ん…」
駄目って言ったのにと思いながらも、身体中に痺れるような心地が広がって、嬉しさが溢れ出す。