完璧御曹司の溺愛


 誰だって、知らずに見られているのは、いい気持ちはしないだろう。


「ごめんね。怒ってる?」


 悠斗が尋ねると、理央は恥ずかしそうに首を横にふった。
 

 許してもらえた事にホッとしながらも、自分の事で怒る理央も、いつか見てみたいと思うのは意地悪だろうか…。 


「もう、あんなふうに盗み見たりしない。これからは、こんなに近くで理央を見てられるんだから」


 屋上のライトに照らされている、理央のピンク色に染まった頬。


 それは、絵を描く自分を勝手に見られたという、ただの照れに過ぎない。

 
 相手が誰であろうと、理央はこんなふうに頬を染めるだろう。


 それが少し気に入らなくて、無理にでもこちらに振り向かせたくなった。




「その髪飾り……」


 理央が付けている、桜の髪飾りが目に入った。


 理央の今の頬の色と同じだと思った。


「よく似合ってる……」と、ひとり言のように呟く。


 理央を形にする全てが、愛しくてたまらない。


 恥ずかしさの限界を迎え、耳まで赤く染まってしまった理央は、少しだけ距離を取るように、手すりに手をかけチョコチョコと横歩きをした。


 困り果てた理央は、そんなふうに俺から離れて行こうとする。

 
 その愛らしい行動が、俺の心に毎回、火をつけると言う事に、理央は気付いているのだろうか?


 悠斗は理央の腰に手を回すと、一気に自分に引き寄せた。





< 27 / 221 >

この作品をシェア

pagetop