完璧御曹司の溺愛
誰だって、知らずに見られているのは、いい気持ちはしないだろう。
「ごめんね。怒ってる?」
悠斗が尋ねると、理央は恥ずかしそうに首を横にふった。
許してもらえた事にホッとしながらも、自分の事で怒る理央も、いつか見てみたいと思うのは意地悪だろうか…。
「もう、あんなふうに盗み見たりしない。これからは、こんなに近くで理央を見てられるんだから」
屋上のライトに照らされている、理央のピンク色に染まった頬。
それは、絵を描く自分を勝手に見られたという、ただの照れに過ぎない。
相手が誰であろうと、理央はこんなふうに頬を染めるだろう。
それが少し気に入らなくて、無理にでもこちらに振り向かせたくなった。
「その髪飾り……」
理央が付けている、桜の髪飾りが目に入った。
理央の今の頬の色と同じだと思った。
「よく似合ってる……」と、ひとり言のように呟く。
理央を形にする全てが、愛しくてたまらない。
恥ずかしさの限界を迎え、耳まで赤く染まってしまった理央は、少しだけ距離を取るように、手すりに手をかけチョコチョコと横歩きをした。
困り果てた理央は、そんなふうに俺から離れて行こうとする。
その愛らしい行動が、俺の心に毎回、火をつけると言う事に、理央は気付いているのだろうか?
悠斗は理央の腰に手を回すと、一気に自分に引き寄せた。