完璧御曹司の溺愛



「ねぇ、…どこに行くの?」


 悠斗の腕の中に閉じ込められた理央の耳元で、悠斗は小さく囁いた。


 驚いたように理央は悠斗を見上げてくる。


 夜空の星を映し出しそうな大きな潤んだ瞳。


 きめの細やかな白い肌。


 ふっくらと甘そうな可愛い唇も今は全て自分のものだ。


 思わず口づけたくなって、悠斗はグッとこらえた。


 さっきまで、理央を羞恥で困らせていたのは自分だったのに、こうして近づいただけで、理性は呆気なく崩壊しそうになる。


 本当にどこまで自分を翻弄するつもりだろうか。


 悠斗にとってこんなにも愛らしい理央は、今日の放課後まで、別の男の物だったはずだ。


 もし、あの男が、本気で理央の事を愛していたなら…。


 もし、理央が、あの浮気現場を目撃していなかったら…。


 今夜、理央を一人占め出来たのは、あの男だったかもしれない____


 悠斗の中で生まれる猛烈な嫉妬心が、理央を包む腕に力をこめた。



 そして、心の中で「……必ず、俺のものにする」と誓う。



 美しい景色と夜空の星に囲まれて、本当は時間なんか忘れて、ずっと理央と過ごしていたかった悠斗だったが、さすがにそうもいかなかった。
   

 理央を、本当の娘のように可愛がっている自分の父親が、『いい加減返せ!』と怒り出しそうだ。


 苦笑した悠斗は、理央の背中に回した腕の時計をそっと確認する。


 そして「そろそろデザートを食べに戻ろうか…」と、名残惜しそうに、理央の身体を解放した。







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