完璧御曹司の溺愛
裕太はそんな理央の顔を、ジッと見つめていた。
何を言われるのかと、瞬時に身構える理央だったが、返ってきたのは「……悪かったな」という言葉だった。
「え…」
また、偉そうに開き直るだろうと思い、次の言葉を準備していた咲も、驚いて目を見開いている。
もしかしてこれは、悠斗のおかげ?
昨日の放課後の、裕太に対する悠斗の迫力は、それは誰が見ても怖かったから____
「……なぁ、今日はあのおっかねぇ先輩、いねぇの?」
目をそらしながら、少し気まずそうに呟く裕太。
「え、悠斗?瀬戸先輩の事?」
「それ以外に誰がいるんだよ。まぁ、良かったな。お前、嫁の貰い手見つかったじゃん?」
「はぁ?余計な一言多いんだって!」と咲がまたヒートアップしそうなので、理央はいさめるように咲の腕を引っ張った。
「裕太は?水島さんと付き合うの?」
名前は、水島遥。
昨日、理科室で裕太と仲良くしていた、あの子の事だ。
美男美女でお似合いだし、付き合うのなら応援してあげようと思ったのだが…。
「は?お前、何言ってんの?」と、裕太は心底呆れたように言った。
「…え。あ、もう、付き合ってたとか?」
裕太は少し驚いたような顔をしたあと、「はぁ…」と、深いため息をついた。
「別に。あんなのただの遊びだし…」
気だるそうに呟いた裕太は、興味が失せたように背中を向けて行ってしまった。