完璧御曹司の溺愛



 何だってこいつは、超がつく程のお人好しなんだ?

 今朝の玄関の時だってそうだ。

 どこかのうるさいメス犬みたいに、ギャンギャン吠えて噛み付いてこればいいのに、遥と付き合うのかとか、平気な顔で聞いてきて、マジ意味分かんねぇ___


 理央が保健室に現れてから、裕太はイライラしていた。


「別にいい。大した事ねぇし。お前の方こそ調子悪いんだろ?隣のベッドあいてるぞ?」


「うん。ありがとう」


「また目眩かよ。いつも大変だな、お前」


「大丈夫。もう慣れてるよ」


 笑顔を作って余裕を見せる理央が、裕太には誤魔化しに見えた。

 
 そうやって上辺を取り繕うのは、目眩に対する対抗策か何かなんだろうが…。


 本当は弱いくせに、見てるだけでムカつくんだよな…。


「何が大丈夫なんだよ。お前見てるとイラつくわ…」


「…………そっか」


「あー、別れて良かったわ。せいせいする」


「…そうだよね。裕太には、もっといい人が沢山いるだろうしね」


 そのまま、隣のカーテンを開けて中に入って行こうとする理央。


 また傷つけてやろうと思ったのに、何か別の事を考えているように、理央は俺と目も合わそうとしない。


 理央が、今にもカーテンの中に消えてしまいそう事に、裕太は焦り始めていた。

 
 理央が自分に振り向かない事が、なぜだか、面白くない。



 昨日みたいに、震えて泣けよな…!!




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