完璧御曹司の溺愛


 
 カーテンが閉まる直前「なぁ!」と、裕太は理央の腕を掴んで引き止めていた。


 驚いたように裕太に振り返る理央。

 その大きな瞳に浮かんでいるのは、紛れもなく俺だった。


「やっと、向いた…」


 は?

 何言ってんだ、俺…


 これじゃ、俺に振り向いて欲しかったみてぇじゃねぇか____

 

「ゆ、裕太?」


 理央は動揺しながら、掴まれた腕と俺の顔を交互に見ている。


「……お前さ、昨日の先輩、好きなわけ?」


「えっ?」


「……あの先輩の事、考えてるだろ?さっきからずっと…」


 何でこんなに俺、理央の考えてる事、分かるんだよ…。


「私が、悠斗を好き……?」


 それから理央は何も言わずに黙り込んでしまった。


 青白かった顔に少し赤みが浮かぶのを見て、「どんだけ好きなんだよ…」と、鼻で笑ってしまう。


「ゆ、裕太には、関係ないでしょ…!」
  

 裕太に返ってきた言葉は、怒りを含んだようなものだった。


「また、私をからかって、そんなに楽しい?」


 真っ直ぐに裕太を見上げ、睨みつけてくる理央。

 
 怒りからか、その目には涙が溜まっていた。


 昔から控えめで、ほとんど感情的になる事がなかった理央が、自分に怒りを向けるのは初めてかもしれない。


 その理央の心の深い場所に、裕太は初めて触れられた気がした。


 そして裕太はこの時やっと、気が付いた。


 自分がなぜこんなに理央を見ていて、イライラするのか…。


 それはいつまでも、理央の心が自分の物にならないからだ_____


 昔から側にいる、いつも俺を心配し、大切に思ってくれている。


 でもそれは、幼なじみという感情だけで、いつだって、理央の心の中心に、俺がいる事はなかった……。
 

 だから、腹が立って仕方がなかったんだ____




「___なぁ、俺にしとけば?」 


「えっ…」


 本当は、もっと俺を頼って欲しかった。


「だからぁ、俺にしろって、そう言ってんだよ…!」


 そしたら、もっとちゃんとお前を守れたかも知れないのに…。





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