完璧御曹司の溺愛



「俺がいなかったら、どうなってたの?」と責めるような目で見られた。


 そんな表情さえも、胸が花火みたいに弾けるのだから、どうしようもない。


「ご、ごめんね?」


「駄目。許さない…」と、悠斗の形のいい唇に、手首を押し当てられた。


 惚れ惚れするようなその仕草を目の前で見せつけられた理央は、何も言えなくなってしまう。


 心臓が全速で動いて、息をするのも苦しくなる。


 悠斗は目を閉じて、理央の細い手首の温もりを感じているように動かなかった。


 理央は、そんな悠斗の長い睫毛を見つめて言った。


「…ゆ、悠斗?」


「ん?」


「ひ、人に見られちゃう…」


 ここは階段のど真ん中。


 今の状況が、理央にとっては恥ずかしくて、どうにかなりそうだった…。


「……そうだね」と、悠斗はそっと瞼を開けて唇を離すと、理央に微笑みで返した。


 その表情が少しだけ、もの哀しいようにみえて、理央の胸にチクンと、針が刺さるような痛みが走る。


「もう、下校の時間になってしまったから帰ろうか。理央の家まで送っていくよ」


 理央の手首を解放すると、悠斗は大きな手のひらで、理央の頭を包むように撫でてくれた____





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