完璧御曹司の溺愛


 理央から見た悠斗は、いつも立派で完璧で自信に満ちている。


 頭が良くて、外国語もペラペラで、周囲からは当たり前のように、秀和の跡を継ぐと思われているはずだ。


 でもきっと、悠斗には悠斗なりの葛藤がある。


 いつからかは分からないけれど、それは少なからず、悠斗を苦しめてきたものに違いない。


 私は、悠斗の事を知らなすぎる___


 これからは時間をかけて、悠斗の事を知っていきたい。


 悠斗が私を助けてくれた時みたいに、私も悠斗の助けになりたい。


 兄妹よりも、もっと深い絆で、悠斗に心を開いてもらいたい。


 頼ってもらいたい。



「理央?どうしたの?」と、悠斗が顔を覗き込んでいた。


「もしかして、車で帰りたかったとか?」


「えっ、あ、ううん。違うの」


「じゃあ今日は、俺と一緒に帰ってくれる?」


「もちろんだよ」


「良かった…」と、悠斗はホッと息をつく。


「理央の家は、どの辺りなの?」


「えっと、ここからそう遠くないよ?電車で二駅行った先なの」


「そうなんだ。案外近くにあるんだね。実は俺、ずっと理央の家に行ってみたかったんだよ」


 二人で一緒に歩道を歩き出す。 


 こうやって、二人で並んで歩くのは初めてだなと理央は思う。


 つい先日まで、全く知らない人だったとは思えないくらい、悠斗の隣は自然と馴染みやすい。


 それは悠斗がさり気なく、理央の歩幅に合わせて、車道側を歩いてくれているからだと気がついた。


 こういうちょっとした気遣いも、悠斗はさらりとこなしてしまう。


「放課後は美術室で理央を毎日見ていたけど、声をかける事は出来なかったから」


「いつか、家まで送り届けてあげたいと、ずっと思ってた。それが今、こうして叶って嬉しいよ」と、悠斗はにこやかに微笑む。


 悠斗のゆっくりとした足取りは、理央とのこの時間を心から楽しむようにも感じられて、理央も、つられるように笑みがこぼれた___




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